主にトラックをはじめとする商用車向けのハーネス設計・開発を手がける古河AS厚木事務所。前編では、EVトラックの開発を担当する高圧ハーネスチームの取り組みをご紹介しました。続く中編では、同じ自動車メーカー様の商用トラック(EV以外)を担当する低圧ハーネスチームにスポットを当てます。今回は、お客様の設計部門に出向し設計支援や品質改善に取り組む平本さんと、社内で製造部門との調整を担う鈴木さんに話を聞きました。
目次
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- 初のEVトラック開発プロジェクト
- 設計と製造現場のギャップを埋める改善提案
- 図面の背景を読み解き、納得感ある調整を
- 離れていても、同じ目線で動けるツーカーの信頼
- 先回りの連携で開発全体の円滑化へ
客先と社内、異なる立場で “橋渡し役”を担う
―まずはお2人のお仕事内容を教えてください。
平本: 私は現在、自動車メーカー様の設計部門に出向し、EV以外のトラックを対象としたマイナーモデルチェンジに伴うワイヤーハーネスの設計に携わっています。出向先で、ハーネスの専門家として設計の補助や技術的なアドバイスを行うのが主な役割です。自動車メーカー様が作成された図面には、ハーネスの専門的な視点から見ると、製造が難しい内容も少なくありません。そうした部分を事前に確認し、製造しやすい形に落とし込めるよう、提案や調整を行っています。お客様の現場の動きをいち早くキャッチし、それを古河AS社内に展開することで、スムーズなものづくりへとつなげる橋渡しを担っています。
客先に出向し設計に携わる平本さん
鈴木: 私は厚木事務所で勤務しており、客先にいる平本さんと連携しながら、主に社内の調整業務を担当しています。特に、ハーネスの製造を担う部署との連携が中心です。新しい仕様や設計の要望が届いた際、それが社内で実現可能かを確認し、難しい場合にはその要因や改善案を整理して、お客様側へフィードバックします。お客様の要望と社内の間に立ち、現実的な仕様へとすり合わせていくのが、私の主な役割です。
設計と製造現場のギャップを埋める改善提案
―お客様の設計部門に対してどのような提案をされているのですか。
平本 : お客様は自動車メーカーなので、当然「クルマを完成させること」が最終目的です。そのため設計もその視点から進められるのですが、実際のワイヤーハーネスの製造現場とは噛み合わない部分が出てきてしまうことがあります。どういうことかというと、ハーネス図面の要求と製造作業でギャップが起こってしまうんです。古河AS側は図面が出てから製造準備に入る流れなので、こうしたギャップがあると、着手の遅れにつながってしまいます。そこで私は、「こういった情報が事前にあれば納期も短縮でき、手戻りも防げます」とお伝えしながら、仕様のすり合わせを行っています。単なる“お願い”ではなく、双方にとってメリットのある改善策として提案することで、前向きなやり取りを生み出せるよう意識しています。
また、商用トラックは特に仕様のバリエーションが多く、例えば燃料タンクだけを取っても、容量が50Lから100Lまで様々で、1つだけの車両もあれば2つ搭載されているものもあります。さらに販売先の国によって適用される法規も異なるため、設計にはそれぞれに応じた対応が求められます。そうした多様な条件をあらかじめ把握し、古河AS側に事前共有することで、製造工程の短縮や生産準備の効率化にもつなげています。
このように「先回りして動く姿勢」は、お客様からも「これまでになかった視点だ」と評価いただいており、出向者として大きなやりがいを感じる場面でもあります。
客先で製造現場への影響を先読みし、設計段階から改善提案を行う平本さん
図面の背景を読み解き、納得感ある調整を
―社内の調整業務ではどんなことを心掛けていますか。
鈴木: お客様と社内、それぞれの立場や意図をきちんと理解し、納得できる形で伝えることです。例えばお客様から届く図面のままでは、社内の製造部門から「作業性が悪い」といった声が上がることもあります。そんなとき、図面の背景にあるお客様の設計意図や車両側の制約条件などを可能な限り読み取り、「なぜこのような設計になっているのか」を丁寧に説明するようにしています。逆に製造側の要望をお客様に伝える際も、「なぜこの製造方法になるのか」という理由をきちんと説明する必要があります。それぞれの主張や事情をそのまま伝えるだけではなく、私自身がその理由をしっかり理解し、納得できる状態になってから伝えることが大切だと思っています。何が目的で、どんな制約があって、どんな妥協点があるのか―それらをきちんと自分の中で整理した上で、双方が納得できる仕様に着地させていく。そういう“成立性のある調整”を心掛けています。
離れていても同じ目線で動けるツーカーの信頼
―お互いに「頼りになる」と感じるのは、どんなところですか。
平本: 現在は私がお客様側の設計担当という立場で、鈴木さんは古河AS側の窓口担当という関係性ですが、必要な情報を伝えれば、すぐに意図を汲み取って対応してくれるので、ツーカーのような感覚でやり取りできていて、とても信頼しています。私はお客様側にいるため、社内の詳細までは把握しきれませんが、何かあればすぐにメールや電話で連絡が取れる体制が整っており、鈴木さんが不在でも他の方につながる関係性があるのは、とても心強いですね。
鈴木: 平本さんは、ハーネス設計の専門的な視点から、お客様に対してしっかりと意見を伝えてくれるところが本当に頼りになります。こちらからはなかなか言いづらいようなことでも、現地でズバッと伝えてくれるのは大きな助けですね。
情報のやり取りも非常にスムーズで、こちらが気になる点をチャットなどですぐ聞けて、すぐに答えが返ってくるのもありがたいです。私たちが正式にお客様に確認を取るとなると、その都度、背景を説明する手間がかかるのですが、その“壁”を平本さんがうまく埋めてくれていると感じています。
お互いの存在に支えられながら、現場の課題に向き合い続けている二人。
先回りの連携で開発全体の円滑化へ
―今後の目標を教えてください。
平本 : 出向して1年ほどになりますが、より密な情報連携を通じて、お客様である自動車メーカー様が本当に求めている仕様を、より正確かつ具体的な形に落とし込んでいきたいと考えています。サプライヤーの立場としては、現実的でタイムリーな仕様提案を行いながら、開発全体の円滑化にしっかりと貢献していくつもりです。
鈴木: 理想は、お客様から図面が上がってきてから調整するのではなく、その前の段階で改善提案を重ね、最初から製造しやすい図面が上がってくる状態をつくることです。そうした“事前のすり合わせ”を当たり前の文化として根づくよう、これからも平本さんと連携しながら、お客様と古河ASの両方にとって価値のある改善提案に貢献したいと考えています。
中編では、低圧ハーネスチームが担う客先での実務や、社内との連携の工夫について聞きました。お客様現場と製造、異なる立場をつなぐ“橋渡し役”としての仕事ぶりからは、見えにくい部分の調整こそが、スムーズなものづくりを支えていることが伝わってきました。最終回の後編では、活躍中の若手営業メンバーにインタビュー。やりがいや挑戦についてお届けします。どうぞお楽しみに!