自動車業界における次世代のテクノロジーを象徴するものとして、常に話題から切り離せないのが電気自動車です。「環境に優しい」「省エネルギー」といった観点からも大きなインパクトをもたらすであろう電気自動車は、世界的な取り組みにより昨今ますます推奨され、各社こぞって開発・販売が行われています。
今後、さらなる普及率拡大が見込まれる電気自動車。
シリーズ最終回となる本記事では、電気自動車と古河ASの関わりに焦点を置いて、自動車産業が実現していくサステナブルな未来を探ります。
電気自動車普及促進のため古河ASが提供する製品は?そしてその企業努力とは。
引き続き古河AS常務取締役兼執行役員 山井智之さんにお話いただきます。

電気自動車の電力供給の要を支える古河ASの技術


―電気自動車分野における古河ASの製品の役割をお伺いします。

「電気自動車やハイブリッド車における古河ASの製品の役割は、送電・分電と変電の機能です。車両内において高電圧を、“安全” かつ“確実”に送り、そして一部の高電圧を変電し加工することです」

―具体的にはどのようなものでしょうか。

「高圧ワイヤハーネスがその役割を担っています。電動車(電気自動車やハイブリッド車)は、60Vから数百Vに至る高電圧を動力として使用しますが、古河ASはそれを車両の必要な部位に送り込むためのケーブルやコネクタを組み込んだワイヤリングアッセンブリを提供しています」

 

電動車用高電圧ハーネス 製品ページ

 

「加えて、高電圧においても低電圧(12V系統)と同じく分岐や回路保護を行うジャンクションボックスが必要で、モータールームや電池パックに取り付けるものなど、いくつかの種類において製品化し提供を行っています」

 

高電圧ジャンクションボックス・端子台 製品ページ

 

高電圧の電気を動力とする自動車では、その特性を理解し効率的に扱う必要があり、まさに“安全” “確実”に送ることが重要なミッションです。電力を自在に操り“送電・分電・変電“できる製品は、電気自動車の要ともいうべき存在と言えるでしょう。

さらに、現在開発中の製品についてもお伺いしました。

「また、変電の部分においては、電圧を変換して必要な電圧をとりだすことができるコンバーターの開発を粛々と進めている最中です。
これから必要になる、“車両内で変電を行い、用途によって異種の電圧を取り出し、使い分ける電源システム”に対応する製品の開発を進めています」

電気自動車の要である電力供給の仕組みの、さらなる進化が期待されます。

 

他社との差別化を図る、古河ASならではのユニークな技術とは


―先ほどお話しいただいた製品について、技術の面でより詳しく伺えますか?

「これらの製品の提供において、設計、生産はもちろん、素材レベルからの一貫した技術を適用しております。これは親会社である古河電工のグループが持つ、銅、アルミ、合金のメタル技術とその加工技術、また電気絶縁用の被覆材料として培ったポリマー技術等を複合して活用しています。いわゆる世の中の電力ケーブルや通信ケーブルでのベース技術を応用し、これを車両アプリケーションかつ電気自動車用に進化させているのが特徴です」

「また素材の技術に加えて、端子や接続部分における高性能なメッキや溶接等、異業種にて培った表面処理や加工技術を自動車用アプリケーションとして古河ASが形にして提供しています」


(左)メタル技術(めっき付き銅条) (右)ポリマー技術(発泡樹脂)

「変電に関する技術も、通信で培った回路技術やパワエレ分野での半導体、それらの信頼性確立技術を、同様に自動車用アプリケーションとして適用すべく取り組んできております」
古河ASのみならず、古河電工グループの持てる技術が集結し発揮された開発が実現しているのは、古河AS製品群の強みでもあり大きな特徴といえるでしょう。
例えば前出のポリマー技術は、オリジナルで開発された高電圧ケーブルの被覆用の樹脂に応用されています。

「ケーブルを作るための被覆の樹脂は用途に応じたオリジナルを開発し製品化しております。「CASE」「MaaS」の広がりにより、年々様々な要件が高まる中、『電圧は上がるが、ケーブルをより細くして欲しい』『耐熱性をあげて欲しい』などの要望を加味した樹脂開発が、他社製品との差別化技術の一つとなっています」

金属や樹脂、メッキなど、様々な素材から成る製品群。それに対応できる幅広く柔軟な開発力が、古河ASだからこその技術の底力であり、他社優位性をもって特に評価されている点です。

 

古河ASが向き合う環境問題について


―省エネ化が推進される中で、SDGs(持続可能な開発目標)による産業構造の変革が求められています。古河ASで行なっているお取り組みをお聞かせください。

「SDGsで求められるエネルギーや気候変動の課題を解決する手段として、自動車においては何においても軽量化が有効な手段であると考えております。COの削減目標はCAFE規制で定められておりますが、それをクリアするために自動車メーカーでは電気自動車やハイブリッド車を提供するとともに、個々の車両を軽量化することが必須であります。古河ASの技術を用いたアルミ化や他の素材を用いた軽量化への技術革新を進めており、SDGsの環境の課題を解決するためには非常に有効であります」

車両の軽量化は、燃費向上、すなわちCOの削減につながります。
古河ASの開発したワイヤハーネス が車両の軽量化に大きく貢献していることは、([第2回] プロジェクトストーリー)にてもご紹介しました。

SDGsに関する取り組みは、製品の改良だけでなく、製造過程でも行われています。

「工場におけるCOの排出を削減するために、環境チャレンジ2050を掲げており、サステナブルな社会に向けで取り組んでいます」

古河ASの掲げる「環境チャレンジ」とは

気候変動による影響が顕在化している昨今では、政府だけでなく企業も環境問題を解決するために、中長期の目標を策定し、公開すると共に改善に取り組んでいます。

古河ASとしてもより一層環境貢献に取り組むべく、2018年4月に「環境チャレンジ2050」を宣言しました。“より豊かな環境を、未来を生きる子供たちへ!”をスローガンに、2050年のありたい姿に向かって推進しています。

  • 環境に調和、貢献できる製品の比率を100%にすること
  • 自社の工場、及びライフサイクル全体でCOの排出をゼロにすること
  • 地域貢献としても自然保全活動を創出すること

を目標とし、持続可能な社会の実現に貢献しています。

 

電気自動車のサステナブルな未来に向けて古河ASが目指す道


―電気自動車分野に対し、今後古河ASの目指すところや展望、育てていきたい“人財”などお聞かせください。Sustainableな未来のイメージなどもございましたら、ぜひお願いいたします。

「電気自動車やハイブリッド車の普及を促進するにあたり、古河ASの目指すところは、高信頼性で快適な車両にするための製品を提供することです。その一方でいかに使い勝手を上げていくかも重要であり、送電・変電との機能に加えて給電(充電)するための新技術に取り組んでいます。現在のケーブルを接続してマニュアルで給電するスタイルから、車の側面や底面にある電極板からワイヤレスで電力を供給するシステムへ進化させてゆきます」


電気自動車の普及のため、製品開発と同時に、使い勝手やサービスの向上など、ハードとソフトの両面において力を入れて行きたいと語る山井常務。
それは求める人財像にも表れていました。


「人財としては、素材並びにその加工の技術はもちろん、パワーエレクトロニクス分野と呼ばれる、高電圧・大きな電力を供給する製品の設計や評価の技術を持っている人財が必要です。現在社内の育成と同時に社外の募集も積極的に行っている最中です」

業界内外で移りゆく、求められる製品・サービスと、人。
約2,000名以上の社員を抱える古河ASは、要所要所で業界を牽引する技術者を伴って一丸となり、自動車産業における古河ASの役割をより確かなものとして次世代に繋いでいきます。

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おわりに

最終回は、電気自動車と古河ASの関わりについてお伺いしました。

電気自動車は、技術革新や環境問題に対する考え方の変化により、今後一層の需要拡大と共有が加速していく見込みです。その波及は自動車業界だけにとどまらず、「CASE」「MaaS」で表されるような社会全体のスマートシティ化においても、なくてはならない存在となることでしょう。

古河ASの確固たる技術と先を見据えたビジネスビジョン。
この2つを掛け合わせ、変革を迫られる自動車業界においても、日進月歩の勢いで業界を牽引し続けていく存在であると、強く感じるインタビューでした。

今後もインタビューは随時更新予定です。
引き続き古河ASのプロジェクトストーリーをお楽しみください。